盲ろう者福島智准教授の講演から
2013.09.6 【感想】
何も見えない、何も聞こえない・・・そうなってしまったら皆さんはどうされますか。
先日、東京大学の福島智准教授の講演を聞く機会に恵まれたのですが、そのお話は私の心に大変深く響くものでした。この感動を少しでも皆さんにお伝えしたく、ここに記したいと思います。
先生は現在44歳です。小さな頃は全く普通の健康な子供でしたが、9歳で何も見ることができなくなり、さらには17歳で音を聞くことさえもできなくなる全盲ろう者となってしまいました。いつまでも続く静かな夜の世界。そんな孤独と絶望の中で最も辛かったのは、まわりの人とふれあうことができなくなってしまったことだそうです。自分から声をかけることはできるが、相手の表情が見えない、返事が聞こえない。次第に会話をしようとする意欲も失っていきました。
そんな先生が暗闇から抜け出せたのは、お母様の思いつかれた、点字を応用し指先を触れ合わせることによる「指点字」という会話方法と、この手段を使って実際に話しかけてくれた指点字通訳の方たちの支えがあったおかげだそうです。まわりの人とのふれあいに助けられ、先生は大きな生きるエネルギーを与えられました。
また大学進学の際には「日本では盲ろう者が大学に進学した例はないが、前例がないなら君が前例になればいいじゃないか。応援するよ。上手くいかなければその時また考えればいいさ。」と高校時代の担任の先生に励まされ、助けられ、そして支えられながら東京都立大学に入学することができました。
その後研究者としての道を歩み、2001年から東京大学バリアフリー分野の准教授となられたわけですが、先生はご自身の体験から「困難に挑戦する」ということについて下記のように考えておられるそうです。
「挑戦」とは一人だけでがんばって成果を得ることではなく、まわりの人たちの助けと共にあるもの。「挑戦」とは日々の努力と準備があってこそ成功するもの。「挑戦」とは相手を打ち負かすことではなく、自分自身に挑戦すること。「挑戦」とは他の人と協力しながら新しいものを生み出していくこと。そして「挑戦」とは名誉や身分的な地位を得ることが目標なのではなく、自分自身がしっかりと生きていくこと、また自分とまわりの人たちとが互いに生きていくことを支えあう努めの中に本当の困難があり、その努めこそが最も重要な「挑戦」だということ。
また、先生は次のようにもおっしゃっています。
「どのような困難な状況にあっても、可能性がゼロになることはない。挑戦してその状況を変えていく可能性は必ずある」と・・・。